合同会社ジンバル/Gimbal LLC

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グローバル化の鍵はスタンダード作り

2016.02.23
バローレ総合研究所 代表 勝眞一郎
勝眞一郎
勝 眞一郎
1964年生まれ。バローレ総合研究所代表。サイバー大学IT総合学部教授。奄美市情報通信産業インキュベーションマネジャー。機械製造業に18年勤務。モノづくりの現場で、経営、設計、製造、物流、情報システムと広範囲な活動をグローバルな舞台で実践。社会貢献を基軸とした「バローレ経営」の提唱者でもある。奄美大島出身。フリーダイバー、サーファー。

成長を求める企業にとって、国内のマーケットが縮小傾向にある中、海外進出は避けては通れない道になっています。円安基調が続いていても、調達、販売、製造、開発など何かしらの機能で海外とのつながりは増えているのが企業の現状です。

物流網の整備、金融の連携、インターネットによる情報交換。取引の利便性は以前より格段に増しています。しかしながら、日本本社からは「現地法人の社長がうまくコントロールできない。」「生産計画や開発・設計の機能の現地化が進まない。」などの悩みが聞かれます。現地側からは「日本からの指示は整合性がない。」「日本から来るマネージャーは4年に1回交代し、そのたびに方針が変わる。」などの悩みも聞きます。

いったい何が問題なのか?その解決方法はあるのか?について今回は考えてみたいと思います。

米国での経験で学んだこと

米国から日本に進出してきた会社で、現地化に苦しんでいるという会社をあまり聞いたことがありません。

受入の日本側、主に消費者の間から経営スタイルが日本には馴染まないのではないかという声はあります。その理由は、米国企業が自国標準ではなく、グローバル標準を整えて、日本に限らず全世界で展開しているからだと私は考えています。

米国は、合衆国というだけあり、州によって、さらには州の中でも文化や民度の違いがあります。1776年の建国以来、国の仕組みを作り上げていく段階でスタンダードの考え方が根付いてきました。窓や枕のサイズの標準化はもとより、ANSI(米国規格協会)による規格の徹底、BOK(Body of Knowledge)による知識体系の整備などあらゆるところにスタンダードが存在し、多くの国民がスタンダードに従って活動をしています。スタンダードがなければ、3億人以上が生活する50の州を効率的に統治し、運営することはできません。

私は1990年から4年間シカゴを中心にロサンゼルス、ノックスビルの3拠点の生産管理、販売管理、経理のシステムの開発・運営を行なっていました。当時はインターネットの萌芽期で、多くのスタンダードが毎月のように改訂されていったのを記憶しています。

一部の優秀な専門家たちがスタンダードを作り、多くの人達がそれに従うことで、好むと好まざるとを問わずダイバーシティが可能な社会として国が動いていることを実感しました。

スタンダードから考える

グローバル企業のスタンダードの立案のポイントは、グローバルとローカルの役割分担を決めることにあります。業務分野ごとに、「グローバル標準化の業務領域」と「ローカルエンパワーメントの業務領域」に大別します。マーケティングや販売であれば、基本的なグローバル戦略だけは本部側で立案しますが、現地での調査、ローカル戦略、実行はローカルに任されるのが一般的です。逆に研究開発分野では、基礎研究を始め、大半をグローバル本部で戦略立案、実行しなくては統制がとれなくなってしまいます。研究開発や生産の全機能が1か所に集まる必要はなく、1製品カテゴリや分野について主となる場所を決めるという方法もあります。COE(Center Of Excellence)という名称で、世界各地に開発や生産拠点(マザー工場)を分散させている企業もあります。

経理の機能においては、グローバル会計や連結会計は本部の役割、各国の会計基準に合わせた会計をローカルの役割と分担されます。

最もグローバルレベルでスタンダードとして統一されているのが、業績の評価基準と評価方法です。業績評価には客観的かつ透明性のある評価が求められます。Think Global, Act Local という心構えだけでなく、具体的に項目別にグローバルとローカルの役割を決め、スタンダードを決めたうえでの海外展開が求められます。

スタンダード展開の秘訣は年に1度のフェイス・トゥー・フェイス

グローバル本部が一生懸命作ったスタンダードを各現地法人に持ち込んで現地説明会。これは現地側に最も嫌がられる上意下達方式です。スタンダードは合意で決定するのがポイント。年に1度は幹部会を開催し、グローバル本部とローカルトップで合意して決めておくと、決定に自ら関わったという責任感からスタンダードに対するコミットメントのレベルが上がります。

経営を始めとする機能のトップが1年に1回は顔を合わせ、フェイス・トゥー・フェイスで1年間の振り返りと、次の1年のコミットをすることは決してコスト的にも無駄ではありません。人は感情の動物です。ウェブ会議で会議は出来ますが、顔色を直に見ることのできるミーティングの効用を得るほど、現在の技術はまだ到達できていません。

現地化の秘訣

私の考える現地化の秘訣は以下の5つです。

  1. ① 全社でビジョンとミッションを共有する
  2. ② グローバルとローカルの役割分担とスタンダードを話し合いで決め、合意・明文化する
  3. ③ 評評価はグローバルスタンダードで透明化
  4. ④ 年に1度は機能ごとにグローバルミーティング
  5. ⑤ 研究開発や生産はCOEがリーダーシップを発揮する

現地で販売を行なう段階、生産を行なう段階、研究開発を行なう段階でグローバルオペレーションの難易度は大きく異なります。現地での採用もあるので、まずは販売・カスタマーサポートからの展開が得策だと私は考えています。

2001年のロンドン出張時の写真 (2001年のロンドン出張時の写真)

どこの国の企業かわからない企業になる

グローバル企業になったかどうかは、拠点展開の多さだけでなく、消費者を含むステークホルダーから、どこの国の企業なのかわからなくなることです。

イタリアの会社だからデザインがいい、日本の会社だから品質が高い、などという国の持つ印象によってバイアスがかけられている内は、まだグローバル企業とは言えません。どこの国に本部があるかわからないけれども、商品のチャーミングさや品質、サービスの質、そしてスピードや価格などで全世界に熱烈なファンがいることが真のグローバル企業であると言えるでしょう。これから海外進出をする企業、既に海外進出はしているが現地とのミスコミュニケーションに悩む企業では、現地と一緒にスタンダードを作ることから取り掛かってはいかがでしょうか。