合同会社ジンバル/Gimbal LLC

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「大企業病」にいたる、
「企業組織」に起こる課題

2016.02.23
ヤンマー株式会社 執行役員 ビジネスシステム部長 矢島孝應
矢島孝應
矢島 孝應
1979年、松下電器産業(現パナソニック)入社、アメリカ松下電器株式会社 MIS ジェネラルマネージャー。本社 情報企画部長、三洋電気の執行役員ITシステム本部長などを歴任。2013年1月、ヤンマー株式会社入社。売上高1兆円を目指すヤンマーのIT革新に向け、グローバルにビジネスシステム改革を推進中。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)審議委員、社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)、IT部門経営フォーラム関西座長

前回"「創発」と「企業組織」"と言うタイトルで、「企業組織」が有効に機能する為の4つの重要な要素について、述べさせていただきました。今回は「企業組織」が大きくなるにつれて、陥りやすい課題について記載させていただきます。
前回掲載した「企業組織」が有効に機能する為の4つの重要な要素は次の通りでした。

  1. ① 軸となる明快なビジョン(使命)を持つ
  2. ② 1段上の視点で価値を確認する
  3. ③ 推進する際の役割を明確化し理解する
  4. ④ 判断する明確な基準を持つ

「企業組織」に起こる課題

現在「企業」として活動している大きな組織でも、最初は一人か数名により仕事を始め、ひとつひとつ成功をつみ重ね、そして事業を拡大してきています。 創業者が一人で、又は少人数のパートナーとのみで仕事を進めている時には、多くの事を頭の中で自然に整合性を取りながら、目標に向けた活動が進められ、個人の意思決定が全ての意思決定として事業を進めてきたと思います。

しかし、当然ですが、事業が拡大していくことにより人が増え、組織も大きくなってきます。そうした中で発生するのが次の課題です。

  1. ① コミュニケーション・プロブレム
  2. ② 個別取組強化≠全体最適
  3. ③ 成功体験への固執

そして、最後には

  1. ④ 「大企業病」

に陥ることになります。

「コミュニケーション・プロブレム」

「コミュニケーション・プロブレム」と言う言葉は、普段は違う国の言語を使う者同士でコミュニケーションが取れない、又は取り難い時に良く使われる言葉です。

勿論、言語の違いは非常に大きいですが、同じ言語、例えば日本語を使っている者同士でも「コミュニケーション・プロブレム」は起こります。

また、当然ですが、人が増えると相手に伝わらない、誤解する確率が増加します。人が増えると相互のコミュニケーション・ラインはうなぎのぼりに増加します。2人のコミュニケーション・ラインは1本です。3人になれば3本、4人なれば6本、10人になれば45本、20人になれば190本のコミュニケーション・ラインが必要になります。そうなれば、伝言ゲーム同様、正確にコミュニケーションすることが困難になります。そして、お互いの誤解を減らすためには、出来る限り明確に物事や指示の内容を指し示すようになります。しかし、実はそれが、また新たな「コミュニケーション・プロブレム」を生むことにもなります。

関西弁で「あんじょうしてや」と言う言葉があります(関西以外の方で分からない方は申し訳ありません)。この意味を敢えて標準語的に言えば「うまく、具合良く、してください」とでも言うのでしょう。大阪商人はこの言葉を使い、適度な度合いで仕事を進め成功してきたケースが多々あります。

個人や数人で仕事をしている時は、この「あんじょう」がうまく機能します。決めたことは決めたことなのですが、まわりの状況の変化やお客様の反応により臨機応変に各人が対応し、最適に調整し、以心伝心で連携する。だから「あんじょう」するわけです。

しかし、人数が増えてくると、いいかげんな言葉(ごめんなさい、この「いいかげん」も非常にファジーな言葉ですね。「良い加減」と「いいかげん」?)ではミス・コミュニケーションが生じる為、その対策として出来る限り明確に物事を示すようになるわけです。 そうなれば「あんじょう」対処するのではなく、「こう決まっているから」「こう指示されたから」となり、適時的確なアジャストが組織として出来なくなる可能性が現れます。

「個別取組強化≠全体最適」

次に、二つ目にあげた「個別取組強化≠全体最適」についてですが、組織が大きくなるにつれ、必然的に仕事の分担が行われ、各々の役割を「企業内組織」に割り当てて展開することになります。

例えば「たこ焼き屋」(これも大阪っぽくてごめんなさい)が1店舗で営業し、一人の店主が粉の仕入、出汁の作成、生地の配合、焼く鉄板の調達、油の選定、鉄板の温度設定や焼き方、店の回りのお客様の状況を見て何皿くらい焼いておくかの判断、おまけや特売りの設定、新しい味の模索等々。所謂「仕入れ」、「製造」、「マーケティング」、「営業」、「商品開発」全てを一人の店主が行うわけです。

ところが、店の規模が非常に大きくなったり、チェーン店化を進めると一人の人では出来なくなります。そこで、「購買担当」「出汁生産担当」「生産(焼係)担当」「鉄板加工担当」「生産量調整担当」等々の役割を持つ人物や部署が出来始めます。各人や各部署が各々与えられた役割として最高の仕事を行い、非常に素晴らしいメリケン粉を購買担当が仕入れ、最高に美味しい出汁を出汁生産部門が作り、最も熱効率が良く焦げ付かない素材の鉄板を生産技術部門が開発する等々。各自の担当している仕事を最高レベルで進めます。

各自が各々の分野において、最高の粉を仕入れ、最高の出汁を作り、最高の鉄板で焼き、お客様のご来店を多彩な解析で予測する。このように各々が最高の仕事をする、しかし、昔の美味しいたこ焼きではなくなってしまったとのお客様からの悪い評判や評価を頂くようになった。こうした笑い話のような事が、企業の中で数え切れないくらい起こっています。

各々の部署において各々が最高の仕事をしているにもかかわらず、全体としてどうもうまく行かない。その原因として、企業において副社長と言われる方までもが、何かの担当を持ち、役員クラスですら自分の担当分野の仕事にのめり込み、全体を見なくなってしまうことが習慣となってしまい、全体を鳥瞰的且つ素直に見ることが出来る人は社長しかいなくなっているケースが組織の中に見受けられます。

「成功体験への固執」

各人や各部署が努力に努力を重ね、必死に新たな取組みをしてみるのですが、先ほど述べた様に、個別最適になり、個別努力の結果が全体最適に結びつかず、周りからの評価が得られなくなってしまうことが起こります。その結果、努力して、新たな事にチャレンジしてきた人物や部署が周りから非難されたり叩かれたりすると、次に起こり始めるのは、新たな取組みやチャレンジをしなくなる傾向が出てくる。過去に成功した体験だけをベースにして、変化を求めず、新たな取組みをしないようになってしまいます。

「大企業病」

そして行き着くところが所謂「大企業病」と言われる企業の病です。 
ウイッキペディアで「大企業病」を検索しますと

主に大企業で見られる非効率的な企業体質のことである。組織が大きくなることにより経営者と従業員の意思疎通が不十分となり、結果として、組織内部に官僚主義、セクショナリズム、事なかれ主義、縦割り主義などが蔓延し、組織の非活性をもたらす。社員は不要な仕事を作り出し、細分化された仕事をこなすようになる傾向がある。

とありました。将に述べてきた現象が顕著に現れたことにより発症(?)している病と言えます。

気をつけなくてはならないのは、大企業がかかり易く顕著に症状が見えるので、『大企業病』と呼ばれていますが、私は決して企業の大きさによるものではないと考えます。中小企業でも小組織でも何時でも起こりうる可能性があります。

どうすればよいか?

本来ですと、今回述べたような課題を認識頂いた上で、「組織」を有効に機能する方法を述べるのが順番かもしれません。しかし、そうした場合、ネガティブな文章の印象を読者の方々に与えてしまう事を危惧し、前回先に「対処」と言える4つの考え方(視点)を述べさせていただきました。今回のこの課題提起に対し、そうだと思われた方、そうではないと思われた方、どちらもこの課題に対する「対処」として、前回の内容が妥当かどうか等について皆様のご意見をいただければ幸いです。