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女性の活用、先ずは男の論理の離脱から

2016.02.23
黎明国際法律事務所 代表 曉琢也
曉琢也
曉 琢也
黎明国際法律事務所代表。2005年9月から2008年8月にかけて中国に留学。2009年6月、華東政法大学大学院法学修士号取得。中国留学時代につちかった経験とネットワークを活かし、日本企業の中国への進出、撤退を含む各種法的問題の解決をサポートしている。

ある人手不足の対応策についてのセミナーで、講師が語った「女性従業員を心の中で"ちゃん"づけで呼んでいる会社には女性の幹部が育つわけがない」との指摘が胸に突き刺さった。自分自身では、母親も家内も専業主婦ではなく、以前パートナーを務めていた法律事務所でも女性を積極的に採用し、また産休育休制度の整備に力を入れた。しかし、その背景には、女性は守ってあげないといけないという意識があり、真に女性のプロを育てようとしていなかったのではないかとの思いがよぎった。本稿では、女性の活用について、私の考えを述べたい。

中小規模の法律事務所の実情

中小規模の法律事務所の場合、女性の弁護士を採用する場合には、それなりの覚悟がいる。

というのは、一人の弁護士が産休、育休に入った場合、その業務を他の弁護士が引き継がなければならない。案件によっては、複雑で、また受任以来既に数年経過しているものもある。これまでの経緯も含めて、本案件に関する情報を引き継ぐとなると、相当の労力を要することは間違いない。一人一人の弁護士がフルに働いている場合には、単純に業務量が増えるため、これもまた堪える。また、いずれは育休をとった女性弁護士が職場に戻る。そのときには、単純に人件費が増えるため、仕事を確保して増やさなければならない。

事務所の規模が小さい場合、この仕事量の増減の影響が大きく、できるなら男性の弁護士を採用したいというのが法律事務所の本音だと思う。

女性弁護士活用の経験

私が以前パートナーを務めた法律事務所では、女性の司法修習生(司法試験後、弁護士になるまでに1年の研修期間がある。)を採用し、気づいたときには、事務所内の女性弁護士の比率が40%にもなっていた。

内心では、男性弁護士を採用したかったのだが、仕事に対するやる気、面接での受け答え、事務処理能力のいずれをとっても、女性の方が将来性を感じた結果、女性を採用していた。女性の弁護士が増えると、産休育休のルールをきちんと作らないといけないと、就業規則をつくり、弁護士、秘書を問わず、産休育休がとれる仕組みをつくった。他の法律事務所の実情は分からないが、中小規模の事務所としては、女性弁護士が働きやすい環境が整っていたと思う。

私が女性弁護士の採用に抵抗がなく、女性弁護士が働きやすい環境づくりに前向きだったのは、①定年まで働いた母の影響と②離婚事案を通じて専業主婦の悲哀を知ったことが大きい。

母の影響

私の両親は、私が小学4年生のころに離婚した。父は私が弁護士になった年に亡くなったが、とにかく厳しく、恐い父で、私の価値観は多分に父の影響を強く受けている。しかし、育ててくれたのは母である。

母の影響

私は三重県南部の生まれで(写真は、子供の頃遊んでいた七里御浜の海岸)、とにかく山と海に囲まれた地域でのびのびと育ったが、両親の離婚後、母の転勤の関係で、松阪牛で有名な松阪の近郊に引っ越した。私や姉が両親の離婚後も高校、大学と進学することができたのは、母が高等学校の教師として働いていたからに他ならない。中学から大学にかけての私は、親のすねをかじっているだけの身であるにもかかわらず、生意気で、やたらと反抗していたが、今思えば、女手一つで二人の子供を大学まで行かせた母の苦労は並大抵ではなかったと思う。

母が働いていたから、大学を卒業することができ、志望した仕事につくことができたという思いが強く、家内と結婚した後も、家内には仕事を続けるように言った。これは働く女性に抵抗がなかったことと、自分に万が一のことがあったとしても、家内が働いていれば、、、という思いがあることによる。

専業主婦の悲哀

私も弁護士として、これまでに何件もの離婚案件を手掛けてきた。専業主婦の女性が離婚するときに問題となるのは、経済力である。これまで男性側の収入に依存していたため、離婚するとなると、その後の生活設計が立てられない。法律上認められる養育費は安く、子供がいる場合は、子供の学費をどうするのかといったことも問題となる。

子育てや家事という仕事は大変なのだが、いざ外に出て仕事を探すとなると、なかなかいい条件の仕事に就くことはできない。結婚するときは、離婚するときのことなど考えないだろうが、離婚の確率は決して低くない。そのような現実を見てしまうと、自分の娘には、母や家内のように手に職を付けて、いざと言うときに生活に困らないよう教育しないといけないと思う。

男の論理からの離脱

私は、世間一般には女性が働くことに理解がある男性ということになるだろうし、私自身もそのように認識していた。しかし、この認識が曲者だと思う。背景には、女性は弱いもの、守らないといけないものという認識が潜んでいるように思う。

実際、以前勤めた事務所でも、厳しい現場には自分自身が、自分自身が行けない場合には、男性の弁護士を行かせていたように思う。法律事務所でも、企業でも同じだと思う。厳しい仕事を女性に任せることはできないというのであれば、プロを育てることはできない。

国も企業も人材が全て。女性を活用する、女性の幹部を育てるというのであれば、男性である我々の中に潜む女性はか弱いもの、女性は守ってあげないといけないものという意識を取り除く必要があるし、女性においても、企業を背負って立つ幹部になるというのであれば、覚悟をしてもらう必要がある。

弁護士業界で、いろいろな女性弁護士を見てきたが、女性の方はすでに覚悟ができているように思う。後は、我々男性が変わる番ではないだろうか。