合同会社ジンバル/Gimbal LLC

顧客の事業の収益性・成長性・持続可能性の向上に貢献する

個人の創発(出張の経験等)を考える

2016.04.05
株式会社FNAジャパン 代表取締役 井上直樹
井上直樹
井上 直樹
1969年滋賀県生まれ、1992年大阪市立大学工学部情報工学科卒業、1992年日商岩井(株)(現双日)入社、鉄鋼本部所属2003年(株)メタルワン移籍、直後同社及び三菱商事が出資するNCネットワークチャイナ設立の為中国駐在2008年香港にFNAを設立、NCチャイナの旧株主からの事業譲渡を受け独立。
(株)FNAジャパン 代表取締役。FNAチャイナ(工場網信息咨詢(上海) 有限公司)董事長(他、香港・タイ法人の代表)。(株)インフォブリッジマーケティング&プロモーションズ 代表取締役副社長。(株)リスモン・ビジネス ポータル 非常勤取締役。

今やほとんどの企業が、好むと好まざるとにかかわらず、また承知か否かに問わず、海外と何らかの接点を持ってビジネスを行っています。海外に拠点を持ったり、輸出入を自社又は貿易会社で行ったり、モノやサービスのやり取りだけでなく、技術や資本提携などを行っている企業、規模や形態は様々なあるものの、避けては通れない海外との関係や自社としての在り方などは、一部の経営者や担当者だけなく、できれば社員全員がその動向を理解しておくことが必要だと思います。

しかしながら、日本の新聞などメディアの報道を最新の情報として瞬間的に捉えることには注意が必要です。様々な事件や景気の波が誇張されて報道される傾向があり、日本と海外在住の方の状況認識のGAPを感じることが本当にたくさんあります。できるだけ自ら情報を取りに行く姿勢を持っていただきたいと思います。検索エンジンを少し使えば各国のリアルな情報が十分すぎるほど入ってきます。日本語で読みやすく纏まっている情報はやはりジェトロや外務省・経済産業省の公開情報やレポートです。

「百聞は一見に如かず」

私自身、中国で約13年間、タイで3年間、いわゆる「中小企業」を現在進行形で経営しながら多くの企業の皆さんや日本・海外双方の官民の支援機関の皆様とお会いし、様々な情報交換や現地での共同ビジネスを行ってきました。

更に今年はベトナムでのビジネスを準備しています。この原稿も出張地のホーチミンで仕上げています。是非これから皆様と、海外、特にアジアの情報を共有しながら創発のきっかけを共有できればと考えています。

私はほぼ毎月のペースで上海・バンコク・東京にそれぞれ約1-2週間単位で滞在し、偶にベトナムや中国の内陸や沿岸部他を出張経由地として回遊魚のように移動しています。

昨年は100回を超えるフライトに乗りました。「メインの拠点は何処ですか?」という質問には「住所不定ですが、あえて言うならアジアです」と冗談交じりにお応えしている位です。今年も現時点でほぼ同じペースです。もう少し効率よく動けないか、出張回数を減らせないかと何時も思うのですが、現地に行き、お客様、社員、時にはそれぞれの地元の飲食店の経営者や席が隣り合ったお客様と語らうと、最後に必ず「本当に来てよかった」と思います。各地での出張が終わり、次の地に移動するころには「この場でもっとしっかりビジネスをして貢献しよう」という気持ちになります。

また変化の激しい場所で数か月も空けてしまうとすっかり動きが変わってしまっているような感覚を覚える事もあり、この移動ペースは非効率ながらも暫くの間続けていこうと思っています。

その分、色々な方法で皆様に生の情報をお伝えできることができればと考えています。(写真①・②)

①上海の高層ビル、数年前は1本だけでした。

①上海の高層ビル、数年前は1本だけでした。

②ホーチミン朝の通勤ラッシュ、殆どバイクです。(3月15日)

②ホーチミン朝の通勤ラッシュ、殆どバイクです。
(3月15日)

ビジネスに関係する部分だけでなく、現地の空気や人と触れることで、この場所でこれから何が起こっていくのか、また既存ビジネスを時には自己否定しつつ如何に変化に対応すべきかを考える刺激材料にしています。すなわち、「百聞は一見に如かず」で、現場主義を重視していこうと思います。

ここでいう現場とは製造現場や会社のことだけではありません。会社で働いているメンバーの日々の生活や、持ち物や身に着けているもの、例えば、モバイル端末であれば最近どんなアプリを使っているなど、その国で生きている人の空気や考え方に直に触れることはとても重要で、それが私の「創発の糧」だと考えています。

会社を一歩出れば、公共交通機関のバスやタクシーの中を見回し、乗っている人や窓から目に入る広告(最近上海では地下鉄の窓越しに動画広告があります)、聞こえてくる音(どこの方言?何屋さん?電話の内容ざっくり盗み聞き・・・)など、本当にたくさんの新鮮な情報が体中に染み込んできます。(写真③・④)

③中国版ツイッター「WeChat」アプリを使ったお年玉抽選会(上海での旧正月版新年会にて)

③中国版ツイッター「WeChat」アプリを使ったお年玉抽選会
(上海での旧正月版新年会にて)

④ハノイのローカル食堂でスタッフと生活情報交換(3月16日)

④ハノイのローカル食堂でスタッフと生活情報交換
(3月16日)

日本・中国・タイそれぞれで起こっている早くてダイナミックな動きの中から、何が起ころうとしているのかを考えています。特に中国の場合、誰もが認める世界最大の市場ですから、日本には進出していない欧米企業やブランドがあり、中国特有の仕組みがあります。中国市場で経験と資金を蓄積した後に、一気に日本に進出してくる可能性もあるのではないかと不安も覚えるほどです。

会社経営者の方は特に安全面から、空港送迎・移動は全てチャーター車を使っています。また、ガイドや現地社員がしっかりと案内してくれるので、何も考えなくても現地に到着し無事帰国されます。
良い意味では、重要な任務にすべてを集中させることができるとも言えますが、少なくとも食事の前後や少しの隙間の時間を使って、現地の空気を感じたり、ガイドさん(若い方がよいかもしれません)が最近何に興味を持っているのかなどの雑談をすることを是非お勧めしたい。意外とそこにビジネスとしての創発のチャンスが隠れているかもしれません。

「百見は一動に如かず」

私が2009年に独立して経営しているFNA(ファクトリーネットワークアジア)の企業理念は
「製造業のビジネスマッチング専門店として、アジアの製造業の挑戦と発展を応援する」
です。詳しいサービス内容や実績はここでは割愛しますが、中国では約1,000社、タイでは約300社の製造業や関連企業様の現地でのPRやビジネスマッチング・市場調査のお手伝いをしています。自社も含め、日系企業がいろんな課題に日々ぶつかりながら少しづつ市場に浸透していく努力をしています。

例えばその中で良く議論されるポイントに「自社の強みは何か」というものがあります。技術・品質・価格など、皆さん熱い思いで説明頂くのですが、僭越ながら私が感じるのは、その分析は日本という市場での結果であり、国や場所・市場環境によって全く違う、時には通用しないという可能性があるのではということです。

これらを如何に早く精度高く分析するための一つの要素として、現地の空気を極力吸い、現地に適応した柔らかい分析プロセッサーやセンサーとして順応させる準備運動が必要ではないでしょうか。

私自身、20代の頃に座学で経営理論を学び、以前在籍していた総合商社では、投融資に関する企画立案やその審議の場に多数参加しましたが、振り返ってみると手応えやリアル感をもってどこまで取り組んでいたかについて疑問が残ります。「百聞は一見に如かず」、いやむしろ「百見は一動に如かず」かもしれません。

実際に脳・手足・すべての稼働部分やセンサーを働かせて初めて何かが身に着き、それが更に次につながっていくのではと思います。組織も人自身も同じことだと思います。(写真⑤~⑦)

⑤上海の朝礼の様子(毎日全員で)

⑤上海の朝礼の様子(毎日全員で)

⑥バンコクオフィスにて(3月17日)

⑥バンコクオフィスにて(3月17日)

⑦べトナムハノイ事務所(3月16日)

⑦べトナムハノイ事務所(3月16日)

是非、時間とチャンスのある限り、一人でも多くの社員の皆さんが現地の市場・人に触れる流れを作っていただくことをお勧めします。今では、アジアに限れば、一泊でも、エリアによっては弾丸日帰りもできてしまうくらい、その距離は近くなっています。

今回は簡単に最近の私自身の創発のきっかけ作りの視点について述べましたが、次回は「若者の創発のきっかけ」をテーマに、毎年上海で行っている日本の大学生(日本人+留学生)の海外インターンのお話ができればと考えています。