合同会社ジンバル/Gimbal LLC

顧客の事業の収益性・成長性・持続可能性の向上に貢献する

どこで暮らすのかを選択する時代

2016.07.25
バローレ総合研究所 代表 勝眞一郎
勝眞一郎
勝 眞一郎
1964年生まれ。バローレ総合研究所代表。サイバー大学IT総合学部教授。奄美市産業創出プロデューサー。機械製造業に18年勤務。モノづくりの現場で、経営、設計、製造、物流、情報システムと広範囲な活動をグローバルな舞台で実践。社会貢献を基軸とした「バローレ経営」の提唱者でもある。奄美大島出身。フリーダイバー、サーファー。

私は月の半分を神奈川県の藤沢市で暮らし、残りの半分を鹿児島県の奄美市で過ごしています。毎月2週間ずつの行ったり来たりで、共通点は、どちらも海のそばというところです。

私が教鞭をとっているサイバー大学は、完全インターネットの4年制大学なので、大学の研究会や教授会、また授業の収録以外は大学にいる必要がありません。学生からのレポートの添削や評価、面談はネットがつながっていれば世界中どこからでも可能です。

奄美では、奄美市の産業創出の仕事を受託しています。平成27年度から全国に先駆けて奄美市が行っている「フリーランスが最も働きやすい島化計画」の仕組みを設計し、市のメンバーとして運営を担っています。観光産業の仕組みづくりや、伝統の大島紬の産業再生などにもコンサルティングというより中の人になって取り組んでいます。

「フリーランスが最も働きやすい島化計画」で使っているキーフレーズが、「どこにいてもできる仕事。ここでしかできない暮らし。」です。「ここ」が奄美である人もいるでしょうし、港区である人もいるでしょう。インターネットがどこにいても使えるような時代になって、働く場所よりも暮らす場所を優先して考えることが出来るようになってきました。

本当にどこにいても仕事ができる?

写真1

写真1.島ではよくヤギを見かける

そこにいないとできないという仕事も多くあります。コンサルティングの仕事は、やはり現場に張り付いて、入り込んで行なう仕事ですから、なかなかお受けできなくなりました。それでも引き受けた仕事には、藤沢と奄美の両拠点から飛んで行っています。

大学の授業の収録もスタジオやディレクターが必要なので、そこに行かなくてはなりません。演習やゼミは、自分のパソコンを使って自分で収録し更新ができるので場所を選びません。

島に暮らす小説家、ライター、芸術家、ウェブページ制作の仕事の方などは、年に数回都会に情報収集に行きますが、それ以外は島で十分に制作活動ができています。

インターネットの恩恵

写真2

写真2.お昼を食べに近くの堤防まで

インターネット・プロトコルにより、まさしく世界中は蜘蛛の巣のようにつながるようになりました。データのやり取りやタスクの依頼、指示などはネットで十分可能です。プロジェクト内でのタスク管理やファイル共有の仕組みも安価で使い勝手のよいアプリケーションが増えてきました。

会議にしても、良く知っているメンバーであれば、3回に2回くらいはウェブ会議でも会議は可能です。逆にあまり知らないメンバーであれば、まず最初に顔合わせと懇親会が必要不可欠で、その後でも3回に1回くらいが限界です。人は、思った以上に会議の空気や参加者の表情・態度を感じて対応しています。

この5年間、島と都会の2地域居住をしてみて、ネットさえあれば、ほとんどの仕事は可能だというのが実感です。

成果主義から見えてきたもの

写真3

写真3.ネットの相談のお礼に魚をいただく

これまでは、事務所にいることに意味がありました。決められた座席に座って、ルーティンワークをこなすことで作業が進み、会社にとっての貢献となりました。電話も机の上にある電話機にかかってきていました。

今では多くのルーティンワークは自動化されるか、BPOと称して外部の専門会社に委託することができるようになりました。企業は、人が判断しなければならない仕事に人材を集中しています。そして、その人はオフィスに座っている必要はなく、離れた場所にいても、データも電話もリーチできる環境になったのです。

こうした環境の整備により、座っていることの安心感よりもアウトプットが重視されるようになりました。昨今の副業容認も、自社のアウトプットが高まるならばいいではないかという動きです。

どこにいても仕事ができるのは、よりアウトプット重視になってきたためであると私は考えています。

消費第一主義からの転換

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写真4.夕陽が落ちるのを見ながら一日の出来事を語りあう

日本において大量消費の時代は終わりました。大量消費に向けた産業システムも構造を変えようとしています。今は、差別化、個性化、オーダーメイド化の流れです。平均的なものは、コモディティ化が加速し、低価格化が進んでいます。

サプライチェーンが発達して、朝獲れの魚が都会でも手に入るようになりました。しかし、自分が暮らす目の前に海で、知り合いの漁師さんが獲ってきた魚を自然に感謝しながらいただくのとではプレミアム感が圧倒的に異なります。近所でさっき採れた野菜は、みずみずしさと美味しさだけでなく、感じるエネルギーが違います。

映像の世界では4Kから8Kへと技術開発が進み、コンピュータの世界では人工知能がきめ細やかな対応を可能にしていきます。精巧な「疑似」が高度化されていくのです。そして「疑似」が高度化すればするほど、本物(実物)がプレミアムになります。

子育て、高齢者ケア、看取り、政治、農業、漁業、林業、教育、衣食住、など誰かにお任せしてきた多くの課題に自ら取り組む時代が訪れようとしていると私は感じています。「どこにいてもできる仕事。ここでしかできない暮らし。」暮らしから選択する時代に日本は入ろうとしています。