合同会社ジンバル/Gimbal LLC

顧客の事業の収益性・成長性・持続可能性の向上に貢献する

「組織」の壁を超えるIT

2016.07.25
ヤンマー株式会社 執行役員 ビジネスシステム部長 矢島孝應
矢島孝應
矢島 孝應
1979年、松下電器産業(現パナソニック)入社、アメリカ松下電器株式会社 MIS ジェネラルマネージャー。本社 情報企画部長、三洋電気の執行役員ITシステム本部長などを歴任。2013年1月、ヤンマー株式会社入社。売上高1兆円を目指すヤンマーのIT革新に向け、グローバルにビジネスシステム改革を推進中。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)審議委員、社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)、IT部門経営フォーラム関西座長

3回わたり企業における「組織」の課題について述べてまいりました。簡単に今までの3回の内容を要約すると、

第一回は、「企業が大きくなり、役割が分担され、機能別に組織化さえることにより、①コミュニケーション課題 ②個別最適な取組み優先 ③成功体験の固執 ④大企業病が起こる。」

第二回は、「企業組織を有効に機能させるためには、①企業の軸となるビジョン(使命)を持つ ②1段階上の視点での価値観を持つ ③役割の明確化 ④判断する明確な基準を持つことが重要な要素である」

第三回は、「組織におけるNo.2の位置づけを強化することにより、組織の発展性や他の関連組織との連携強化が図れる」
と言うことを述べてまいりました。

私は組織論を研究している立場ではなく、いくつかの企業でIT/ICTやデジタル化を進める立場で今まで仕事を進めて来ました。その私が何故組織について3回も使って述べてきたかと申しますと、ITやICTを企業の中で推進している我々の果たすべき役割は、「組織」が持つ課題を認識した上で、必要な業務を遂行していかなければならないと考えているからです。

ITやICTがもたらすメリット

さて、皆様はITやICTがもたらすメリットは何だと思いますでしょうか?コンピュータは何でもできると変なことを思っておられる方もゼロではないでしょうが、ビッグデータやAI等と騒ぐ前に、IT/ICTのベーシックな特性の理解が必要であると感じております。

私たちがコンピュータと通信を活用するのは、人間のコミュニケーション能力を強化したり、その知識やノウハウの活用が如何に強化できるかが基本的な狙いであると考えています。そのコンピュータそのものの特性として、先ずあげられるのは「演算処理の速さと正確性」であり、次にあげられるのは「記憶(記録)容量の増加と検索の速さ」です。又、「通信」が持つ特性としては、離れた場所間をデータや音声で高速に繋ぐことです。

ところで「情報」と言う言葉を調べてみると「物事の事情を人に伝えるもの。人が知覚したときに何らかの意味を想起させ、思考や行動に影響を与えるもの」と記載されています。つまり、当たり前のことですが、起こったことを知らなければ行動も思考も変化しません。例えば、事実として遠い国で誰かが亡くなったとします。しかし、その事実を知らない人にとっては、その事を知るまでの期間(何日経っていたとしても)は、なんら変化はありませんし、思考も行動も全く変化が無いわけです。つまり知らされていない人にとっては、亡くなった方は亡くなっていない事と同じです。

「組織」の話しに戻りますが、企業が大きくなり、事業をグローバルに展開し、各部署や各拠点で起こっている事が、お互いに事実として知らないと言うことが現実では多く出ていると思います。事実を知らない人や組織にとっては、その事は起こっていないことと同じであると言う事です。このことが前回まで述べてきた「組織」の課題を生み出しているわけで、組織の非効率さや弱さが出てくるわけです。ITやICTはそうした情報の壁を距離や時間を越えることで、必要な情報を入手し、必要な対応をする事が出来る重要な要素を提供しているというわけです。

情報の伝え方が急速に変化してきている

起こっている「事実」や「事情」を人に伝えるのが「情報」ですが、その伝え方が急速に変化してきています。コンピュータや通信がデジタルで処理され「情報」として伝達するに当たり、最初は「1」(オン)と「0」(オフ)で構成される「ビット」と言われるものでの処理でした。これが「1」と「0」を組み合わせることにより、数字や文字(当初はアルファベット)を表現できるように8個の「1」「0」の組み合わせ(「バイト」と言う単位)で256種類の文字や記号を割り当てて表現し、意味のある「情報」を管理する事が出来るようになりました。次に漢字やカタカナも使えるように「バイト」を二つ使用し、16個の「1」「0」を組み合わせて65,536種類の文字等を割り当てて表現できるようになり、より正確な「情報」の管理が出来るようになりました。

これがどんどん進歩し、所謂ワードプロセッサー(ワープロ)で文字だけでなく「線」が描けるようになりました。その後「音声」「音楽」「映像」まで「情報」として管理できるようになり、今では「位置(GPS)」の「情報」が色々な場面で不可欠な要素になってきています。

今後、「味」「匂い」、さらには「感情」「気持ち」なども「1」と「0」で表されるようになっていくのかもしれません。

これらは、先ほど「情報」の定義をしたように「物事の事情を人に伝えるもの。人が知覚したときに何らかの意味を想起させ、思考や行動に影響を与えるもの」であり、情報はその為に必要な要素として進化を遂げてきています。

皆様が組織や人間関係、また、家族や友人と、今後どのような「情報」により事情の伝達や相手の思考や行動に影響を与えていくことになるのか、一度考えてみませんか。