合同会社ジンバル/Gimbal LLC

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若者の創発の機会を考える

2016.08.16
株式会社FNAジャパン 代表取締役 井上直樹
井上直樹
井上 直樹
1969年滋賀県生まれ、1992年大阪市立大学工学部情報工学科卒業、1992年日商岩井(株)(現双日)入社、鉄鋼本部所属2003年(株)メタルワン移籍、直後同社及び三菱商事が出資するNCネットワークチャイナ設立の為中国駐在2008年香港にFNAを設立、NCチャイナの旧株主からの事業譲渡を受け独立。
(株)FNAジャパン 代表取締役。FNAチャイナ(工場網信息咨詢(上海) 有限公司)董事長(他、香港・タイ法人の代表)。(株)インフォブリッジマーケティング&プロモーションズ 代表取締役副社長。(株)リスモン・ビジネス ポータル 非常勤取締役。

「次世代に向けた事業開発投資」「次世代への事業承継」・・・常にどこかで囁かれている言葉です。そのための研究開発、人材獲得から育成、一つの企業としてやるべきこと、できることは様々ですが、今回は優秀な社員の獲得・育成の更に上流工程である学生レベルで、将来社会人として、また一人の人間としてやっていくべきことを考えるために「若者の創発の機会」について考えてみたいと思います。

何時(何歳?)が最適なのか、どこで何をやれば良いのか、今の日本の教育制度の課題は何か・・様々な意見・批判があると思いますが、そのほとんどが他人事で「今」「私自身が」「何ができるのか」についてはあまり何も考えてなかったりするのではないでしょうか。実は私もその一人です。

若者に対して「私は」何ができるのか

私自身の学生時代を振り返ると、高校時代は早くから大学受験勉強という「仕事」があり、大学時代はバブル経済の終わりの時期といってもまだ余韻が残っており、自由奔放に勉強そっちのけで友人との学生起業の真似事や、アルバイトに明け暮れていました。理系だった私は大学4年生の時にそれまで遊んだ大きなツケが廻ってきて、最後は研究課題の追い込みの為に休日も研究室に籠りっぱなしだった記憶があります。今でも偶に夢に出てくる位、反省しています。

私は学生時代には、大学生向けフリーペーパーを作ったり、当時は学生の就職売り手市場であったことから、企業が学生向けに広告を出したり、イベントを開催したりする活動が活発でしたので、その受託業務等を行って生計をたてていました。一時は企業に就職せず、そのまま独立状態を維持していこうと考えました。しかし、幸か不幸かバブルが弾けた事でスポンサー企業の勢いが一気に冷め、一旦その事業は辞めて一度会社に入ろうと切り替えたことが良かったのかもしれません。

そんな学生生活でしたが、少し後悔が残るとすればその頃「海外に一度も行ってなかった」ことです。 初めての海外は卒業直前のタイ旅行でした(いまその場所で会社経営するなど夢にも思っていませんでした)。英語は全くダメ、商社入社時の英語の社内試験も、百数十名いる同期の中でワースト10に入る状態で、人事に怒られたくらいです。

そんな私も今は海外が主戦場になっています。

「感じる力」と「伝える力」を磨くために海外へ

何がどう転ぶか解らない時代です。例えば大学時代に専攻した学部とは全く違う世界で仕事するかもしれない。そんな中でも必ず身に着けてほしい基礎は何かを考えてみました。

「感じる力」×「伝える力」
この二つだと私は考えます。この二つの力は更に二つの要素に分かれます。一つは「道具」二つ目は「目的・中身」です。

例えば「感じる力」を分解すると

  1. ① 敏感なセンサー持つこと
  2. ② ①で感じた事をどう受け止めるか

「伝える力」の場合は

  1. ① 語学力や表現力
  2. ② 伝えたい中身は何か
    です。

同じ場所に居て、同じアンテナを張っても、何を捕まえるかが人によって全く変わります。伝える力も、同じ言語で同じ要件を伝えたとしても伝わり方が変わります。

今迄多くの人に会い、最近特に感じるのは、特に企業経営者や社会で長く活躍された諸先輩の言葉は心の刺さり方が本当に違うなということです。「多くの経験やそれをきっかけとした深い思考からこのような言葉につながったのだろう」と思うことが本当に多いです。これは仕事における社内外のやり取り、普段の生活における家族や親戚、近隣の方々との関係にも大きく影響します。

このような能力の準備は極力若いころから是非やっておくべきです。環境は年齢や場所、時代背景によって大きく変化するので、「今」しかないチャンスを有効に活用しないと時間は戻ってくれません。

特に学生時代は

「高く敏感なアンテナを持つこと(感じるだけでも良いと思います)」

「ある程度(日常会話レベルで構わないと思います)の語学を使いこなせる

この二つの要素は、普段の生活を通じて積極的にチャレンジして欲しいです。

それを手っ取り早く経験する方法の一つは「海外体験」だと思います。近場でも短期でも構いません。しかし、それは旅行ではなく、より生活に近い「体験」です。

自分の会社を活用し、母校と一緒に海外インターンプログラムを開発・実行

私自身大学時代にそのような経験が無かった事もあり、今の学生には極力経験してほしいと考え、私の母校である大阪市立大学に依頼し夏休みの短期海外インターンシップメニューを大学と一緒に創りました。既に今年も5回目の準備が始まっています。

今はこれをきっかけに、「大阪市立大学国際交流アドバイザ」に任命頂き、偶に大学に行って学生と交流したり、学長はじめ国際化を担当する皆さんと新しい施策についての意見交換を行っています。私自身、偶に母校に行くことで当時の記憶がよみがえったり、周りの学生と同じような気分になるという錯覚を味わいながら楽しんでいます。

最近では、そのようなメニューをビジネスとして提供する会社や、大学自体が国際化をテーマに様々な取り組みを進めていますが、私は早くからこの取り組みを自社の拠点を使って実験的に始めていました。

短期海外インターンシップメニューは、1週間で3つのプログラムをこなします。

  • OBが在席する企業を3社訪問
  • ものづくり商談会スタッフ体験(1日)
  • 商談会終了後のデータ整理作業(1日)

FNAの朝礼に参加

FNAの朝礼に参加

大学のOB・OGと一緒に

大学のOB・OGと一緒に

OBの勤務先工場を訪問

OBの勤務先工場を訪問

中国人学生と一緒にブリーフィング

中国人学生と一緒にブリーフィング

イベント終了後の記念撮影

イベント終了後の記念撮影

その中でも一番面白いのは弊社が行っている「ものづくり商談会」での直前準備と当日の会場内業務です。

何が面白いかと言うと、これらの業務を中国人の日本語学科の大学生約50名のアルバイトと一緒に混ざって共同作業を行います。また大阪市立大学生の約15名の内、3割が中国から日本に留学している学生も居るということです。日本人学生にとっては「同じ大学に通う中国人」(日本語+中国語がほぼネイティブ)は語学も文化も両方経験から心得ているのでとても眩しく見えます。恐らく日本では彼ら留学生に対し少し差別感をもった目線で見ている人もいたかもしれません。それが現地では完全にアウェイに逆転するから面白い。また「中国の大学に通う中国人学生」は、日本語を少し勉強しているので、片言のやりとりで日本人と中国人が一緒に協力し合う姿も見られます。

「中小企業」と「若い力」の出会いの場を広げ更に海外へ

インターンが終わった後、全ての学生のレポートを見るのがとても楽しみです。語学をもっと勉強しないといけないというモチベーションが上がることは当然ですが、中国人学生とSNSツールを使って友達になったり、商談会に出展する多くの日本の会社(約500社、2, 000名)が上海に集まっている状態を見て、これだけ多くの日本の会社や日本人が中国でビジネスをしているのだという現実を目の当たりにします。更に出展企業は中小企業が多いですから、海外は大手だけのものではないという現実も理解できます。

その結果、人とビジネスが国境を越えることに抵抗がなくなり、理想としては、「日本」対「海外」ということではなく国境そのものの概念・ハードルが下がることを期待しています。また、例えば海外で仕事をしてみたい学生にとっては、大企業だけを目指すのではなく、中小企業に入って海外の事を早く勉強させてもらえるかもしれないという期待もあり、中小ものづくり企業と学生の人材の需給ギャップの解消に向けた動きが少しづつ繋がっていけばと思います。

先に述べたように、様々な海外インターンシッププログラムが混在していますが、多くの場合、一社又は二社の会社に入って勉強するバターンが多いです。しかし、約10日間の短期であっても、イベントの現地スタッフとして国籍問わず放り込まれる不安と無事終わった後の達成感はとても有意義だと思います。

これからもこの活動を継続していくとともに、他の国(タイやベトナム)への展開、更に他の大学や地方自治体の実績として広げていきたいと考えています。