合同会社ジンバル/Gimbal LLC

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リーダーについて考える

2016.02.23
合同会社ジンバル 代表 平山賢二
平山賢二
「学びの泉」は私が担当するコラムです。
学びとは、「?>!」で表現される。「何故?」が先にあって、そこから学びが始まり、「なるほど、そうなんだ!」という一連の活動が学びだと思う。
 事前の疑問を意識していなくても、「!」(なるほど、そうなんだ!)はある。しかし、「?>!」に勝るものはない。普段から、いくつもの「?」をもっていれば、学びも大きいと思う。私自身は、このコラムを書くことで、多くを学ぶ。
また、「創発の泉」では、コラムを担当して頂く方々の学び「?>!」から、更に多くのことを学ぶ事が出来ると思う。
 創発とは、「1+1>2」、つまり、「三人寄れば文殊の知恵」であって、そこから更に多くの「!」(発見)が生まれると思う。

私が小学生の低学年の頃の話である。ある快晴の日の真昼間のことである。母と3歳年上の兄と私の3人で、畑の草を刈り、その草を燃やしていた時のことである。乾燥した日で、そのじりじりと燃えた火が畑のすぐ横の山に移り、メラメラと山の草が燃え始めた。3人で必死に燃える草をたたいて消化しようとしたが、火はどんどん広がっていく。

母は大声で騒ぎながら助けと求めたが、近くには誰もいない。その時の母の必死の姿は私と兄にも伝わり、怯え、不安な中で、鍬で燃えている火をたたいた光景はいまでも鮮明に覚えている。
その時である。遠くにこちらに向かって道を駆けてくるおじさんがいた。みるみるおじさんの姿は大きくなり、遂におじさんは燃える畑と燃え始めた山裾に到着した。同じ村の『斉藤のおじさん』である。

斉藤のおじさんは、「魅力ある男」像となって
私の脳裏に焼きついた

到着した『斉藤のおじさん』の第一声は、「ああ、大丈夫だ。心配するな」である。そして、「燃えている場所はほっておけ。少し離れた山側の草をきれいに寄せて、そこから先に燃え移らないようにしろ。」というものだった。4人はそれこそ必死で草を寄せて草がない道を作った。記憶にあるイメージでは50センチか1メートルくらいの幅の、草の無い隙間を作った。

やがて、燃えるだけ燃えた草はそれ以上広がらず、4人は燃えカスが再び燃えないように、他の場所に移らないように、鍬で燃えカスを寄せながら消火活動をした。

その日の晩、父が帰った時に、母は、「『斉藤のおじさん』が神様のように見えた。ああ、大丈夫だというのを聞いた時、どんなにうれしかったことか。」と言ったのを覚えている。もし山林を焼いていたら、父や母の財産では賄いきれない保証が必要だったことは後で聞いた。

母をそのように安心させた『斉藤のおじさん』の行動は、私にとってあこがれの「魅力ある男」像になった。

瞬時にして状況を判断して解決策を示す。そしてその場で出来る的確な作業指示を出す。そして何よりも結果(消火)を出す。凄いではないか。これがリーダーでなければ、何をリーダーというのか。

「宇宙飛行士はこうして生まれた」にみるリーダーとは

古い話だが、2009年3月8日(日)のNHKスペシャルは「宇宙飛行士はこうして生まれた」というテーマで、日本人3人の新たな宇宙飛行士のNASAにおける選抜試験に関する番組だった。私はいつものようにこの番組を見ながらメモを残している。

そのメモは次のとおりである。

<宇宙飛行士の為の5つの資質>

  1. 1、リーダーシップ
  2. 2、ストレス耐性
  3. 3、場を和ませる力
  4. 4、緊急対応力
  5. 5、使命に対する覚悟

その番組では、個人の能力だけではなく、宇宙での活動におけるチームワークがとれる人材であるか否かが大きな資質として取り上げられていた。宇宙での活動で、何が起きても対処できる人材に求められる資質とは何か?その選抜に当たって、必要な資質として挙げられていたのが、上記の5つの資質である。それはそのまま、経営者に求められる資質そのものではないか。

番組から私が理解した、<宇宙飛行士の為の5つの資質>を日ごろお世話になっている経営者(リーダー)を思い浮かべながら考える。

リーダーシップ

人は誰でもミスを犯しやすいものである。しかし、リーダーがミスを犯せば、その影響は組織全体に及ぶ。だから、リーダーはミスを犯してはいけない。

失敗は成功の母という。しかし、失敗から学ぶよりも成功から学ぶほうがはるかに大きい。だから、失敗してもすぐに取り返さないといけない。失敗のままで放置すれば、失敗する人はまた失敗することになる。

また、リーダーは、考え方もやり方もリードしなければならない。「リードせよ、ミスを犯すな!」を肝に銘じてことにあたらなければならない。

ストレス耐性

経営をしているとよい時期も悪い時期もある。私がアンダーセンのパートナーをしていた時は、二週間ごとに送信されてくる業績表に悩まされた。結果としての業績がうまくいっている時は良いが、業績が悪いときは、レポートを見るたびに胸が痛くなった。たかが管理会計で、自分の金が無くなる訳ではないのにストレスが溜まった。

2001年に仲間とコンサルティング会社を創業した後は、管理会計ではなく、キャッシュで胸が痛くなった。創業時は毎月のキャッシュフローがマイナスにならないように気を配った。

ストレス解消の打ち手はただ一つである。それはストレスから逃げずに、具体的な解決策や取り組みを作業レベルまで詳細に紙に書いて、そして行動することである。納得して行動し始めるとストレスは軽減される。実行にあたっては、「何事も見落とすな、コツコツとやりぬけ!」である。そして問題が解決されればストレスは無くなる。これを繰り返していると、ストレスに対して強くなる。

場を和ませる力

私が最初に勤めた製造業は、創業者が社長を務めていたまさにオーナー企業である。その企業で私は30歳の直前で100人を超える製造部門の責任者になった。

社長は私の若さを心配したのか、「誰でも、君が望む人を部下につけろ」と言った。研究部門のAさんは私の1年後輩で最もほしい人である。しかし、それでは研究部門が困る。そこで、Bさんが欲しいと社長にお願いすると、「Bはだめだ。困った顔をする」と言った。リーダーは、どのような時でも困った顔をしてはいけないと言った。そして、Aさんの名前を出して、「Aを連れていけ」と言った。その創業社長は、私が退職した後も元気と聞いていたが、昨年秋に90歳で亡くなった。

リーダーが眉間にしわを寄せていれば、部下も仲間も緊張する。緊張すればアイディアは出てこないし、場が暗くなって、動く力も軽減してしまう。リーダーはどれだけ困難で緊張感のある場面でも、ユーモアを失ってはいけない。「困った顔をするな。余裕を持て、そして人を引きつけろ!」である。

緊急対応力

冒頭で述べた『斉藤のおじさん』は、まさに緊急対応力の好例である。そこには経験や知識も必要だし、対応する胆力がいる。「落ち着いてロジカルに対処せよ!」はリーダーの重要な資質だと思う。

使命に対する覚悟

使命とは英語ではミッションのことである。Sanseido Word-Wise Web(http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/
では、ミッションについて次のように説明している。

ミッション(mission)とは「任務や使命」のことです。この「任務や使命」には、大きく分けて三つの要素が含まれます。まず第1に「到達すべき目標がある」こと。第2に「目標に進んでいく行動がある」こと。そして第3に「それらが何かに求められていること」です。例えば「我が社のミッションは、社会の食文化を豊かにするために、新鮮な野菜を安く食卓に届けること」と言った場合、この文章には到達目標(=社会の食文化を豊かにする)と、行動(=新鮮な野菜を安く食卓に届ける)と、義務(=社会からの要請)という三つの要素が隠されています。

『斉藤のおじさん』の、あの時の使命は、『火を消す』ことであった。斉藤のおじさんはその使命の為に素晴らしい仕事をして、「魅力ある男」像となって私の脳裏に焼きついた。
「何のために貴方はその立場に居るのか、使命を忘れるな!」は何事にも優先する。

2008年9月に起きたリーマンショックは、百年に一度の大恐慌と言われて、多くの企業が急激な需要不足で「派遣切り」などのいわゆる緊急避難をしたことは記憶に新しい。そして今は人手不足で採用活動に脚光が浴びている。経営をしていると良くなったり悪くなったりで、ストレスも多い。しかし、短期的な取り組みでその場を乗り切るだけでは信頼出来る企業にはならない。

最近は優良と思われた東芝が、経営者3代にわたりその業績を偽ってきたという不祥事で揺れている。高い立場にある人が、多くの人を踏み台にして自分の為だけに生きたとしか歴史に残らない。田舎で、毎日畑仕事をして人生を生きた斉藤のおじさんは、家族以外には歴史に残らないが、はるかに大きい。