合同会社ジンバル/Gimbal LLC

顧客の事業の収益性・成長性・持続可能性の向上に貢献する

「楽観的であれ。
今現在の「ここ」だけを見るのだ」

2016.07.25
「学びの泉」は私が担当するコラムです。
学びとは、「?>!」で表現される。「何故?」が先にあって、そこから学びが始まり、「なるほど、そうなんだ!」という一連の活動が学びだと思う。
 事前の疑問を意識していなくても、「!」(なるほど、そうなんだ!)はある。しかし、「?>!」に勝るものはない。普段から、いくつもの「?」をもっていれば、学びも大きいと思う。私自身は、このコラムを書くことで、多くを学ぶ。

大学の教師をしていた私の友人がこんなことを言った。

「今、大学では就職支援の為に、『自分は何に向いているか、自分は何になりたいか』ということを考えるカリキュラムを作って、学生に教えている。このことが学生を悩ませ、そして就職後に、『これは私がやりたかった仕事ではない、これは私には向いていない』と言って転職活動をする」

会社とは何か、仕事とは何かを具体的に分からない学生が、そのわからない対象を妄想して、その妄想に自分を当てはめて悩んでいるというのだ。

私は転職して3つの会社で働き、1つの会社を仲間と創業し、1つの会社を自分で創業した。計画して転職した訳では無く、チャンスに巡り合ったというのが実際である。そして、今になって振り返ってみても、足元の仕事を一所懸命にやることが実は人生のチャンスや転機を与えてくれる最も大事なことだと思える。

改善・改革には人間関係がつきものだ

成長してきた企業が更に成長するために様々な取り組みをする。今ひとつ業績の振るわない企業が、V字回復を目指して果敢に業績改善に挑戦する。私の仕事はそのような企業の積極的な改善や改革の取り組みを外部からプロフェショナルとして支援する事である。

私は30年にわたって、様々な企業で改善や改革プロジェクトにかかわってきたので、そのこと自体は自信をもって支援できるし、支援できる自信のあるテーマで貢献することで、より満足して頂ける成果を上げることに取り組んでいる。

その取り組みの中で、いつも目にするのは改善・改革には人間関係がつきものだということである。

改善・改革プロジェクトを推進するには社内の人間関係を理解して推進することはプロジェクト成功の大きな要因であることは自明の理である。しかし、プロジェクトが良い人間関係の中でプロジェクトの成功に向かって激論を交わすためには、メンバーひとりひとりが相互の人間関係を意識しないといけないことがあるはずである。そして、何よりも自分自身が、人間関係を意識して取り組む課題があるはずである。

(1)アルフレッド・アドラー そのような問題意識をもって調べていると、アルフレッド・アドラーという心理学者に行きついた。以下はネットで検索したアルフレッド・アドラーに関する記述である。

アルフレッド・アドラー
アルフレッド・アドラー
出典 www.smacc.jp
アルフレッド・アドラー(Alfred Adler、ドイツ語発音: [alfreːt aːdlɐ](アルフレート・アードラー)、1870年2月7日 - 1937年5月28日)は、オーストリア出身の精神科医、心理学者、社会理論家。ジークムント・フロイトおよびカール・グスタフ・ユングと並んで現代のパーソナリティ理論や心理療法を確立した1人。アドラーについては、初期の頃のフロイトとの関わりについて誤解があるが、アドラーはフロイトの共同研究者であり、1911年にはフロイトのグループとは完全に決別し、個人心理学(アドラー心理学)を創始した。

そのアルフレッド・アドラーの名言集には心揺さぶられる言葉が沢山ある。

(2)アルフレッド・アドラーの名言集 上記の出典にはアルフレッド・アドラーの名言集が載っているが、其のうちのいくつか、今の私が重要と思った言葉を以下に編集して転載する。

人生が困難なのではない。あなたが人生を困難にしているのだ。人生はきわめてシンプルである。

人は過去に縛られているわけではない。あなたの描く未来があなたを規定しているのだ。

「やる気がなくなった」のではない。「やる気をなくす」という決断を自分でしただけだ。「変われない」のではない。「変わらない」という決断を自分でしているだけだ。

これらの言葉は、「自分が自分の未来を作っている」というメッセージに聞こえる。私には同じような経験がある。「職場が暗いのは、リーダーである貴方が明るく振舞わないからだ(明るくないからだ)」ということにも通じるように思う。

健全な人は、相手を変えようとせず自分がかわる。不健全な人は、相手を操作し、変えようとする。

自分だけでなく、仲間の利益を大切にすること。受け取るよりも多く、相手に与えること。幸福になる唯一の道である。

「よくできたね」とほめるのではない。「ありがとう、助かったよ」と感謝を伝えるのだ。感謝される喜びを体験すれば、自ら進んで貢献を繰り返すだろう

これらの言葉は、「Give and Take」ということだろう。「・・・してくれない」ではなく、自ら動けばよい。Takeを考えて動くのではなく、Giveすればよい。自分で様々な企業で働き、様々なクライアント様とプロジェクトを推進してきた。創業もしてきたが、Takeを考えず、自分が出来ることを一所懸命することが大事だと今振り返って納得できる。

楽観的であれ。過去を悔やむのではなく、未来を不安視するのでもなく、今現在の「ここ」だけを見るのだ。

判断に迷った時は、より大きな集団の利益を優先することだ。自分よりも仲間たち。仲間たちよりも社会全体。そうすれば判断を間違うことはないだろう。

人の心理は物理学と違う。問題の原因を指摘しても、勇気を奪うだけ。解決法と可能性に集中すべきだ。

さあ、くよくよ考えずに、楽しくやろう!元気を出せ!そういっているように聞こえる。 プロジェクトリーダー自身が未来をつくろうとして突き進めば、メンバーもその意気込みを感じてくれるだろう。間違いなく、仲間と一緒に行う素晴らしい取り組みとその成果を分かち合える。そのイメージが湧いてくる。

リーダーは手持ちの資産や資源で成果を上げるプロフェショナルである。それならば、そのリーダーの心構えは何か?リーダーの問題解決能力にプロジェクトの成果がかかっている。「楽観的であれ。(中略)今現在の「ここ」だけを見るのだ」とはそのようなメッセージに聞こえる。

再び考える、「楽観的であれ。今現在の「ここ」だけを見るのだ」

私が大学を卒業して就職した年は、好景気で学生の売り手市場だった。大手企業でも教授の推薦があれば、無試験で就職できる先があった。しかし、私は悩むことなく、自分で探して中堅のバルブ製造会社に就職した。会社がどのようなものなのかも知らないし、会社の中での仕事がどのようなものなのか全く想像できない。例えば設計や営業、マーケティングと言っても今ほど情報があるわけではない。就職してからしかわからないことに、就職する前から悩む必要はないと思ったからだ。唯、与えられた目先の仕事をして、一所懸命働こうと思っただけだ。

今の学生も会社の理解や職業の理解という面では30年前とそんなに変わらないと思う。ましてや今はアジアを含む海外でのビジネスの機会が増えている。学生が仕事を想像することは難しい。

甲南大学で、毎年4月から7月の間でコンサルティング講座がある。私はそのうちの2日間のプログラムを担当して学生に教えている。丁度この季節は学生は就職活動で悩んでいる。その中で、「悩むならば、どこでもよいから、ここぞと思った会社に入り、毎日を一所懸命働け。3年間働いて、何かが見えてきたら転職するも良い」と話した。昨年まで行っていた論文試験では、多くの学生が、「もやもやが解消した。足元の活動に一所懸命がんばります」と書いていた。

社会人になったら、足元の仕事の繰り返しだ。その取り組みの積み重ねの先にチャンスがある。だから、「楽観的であれ。今現在の「ここ」だけを見るのだ」の繰り返しだと思う。

タニン・チャラワノン(CPグループ会長)

さて、私は気に留めた言葉をメモするようになってもう20年以上になる。日本経済新聞の私の履歴書には、今、タニン・チャラワノン(CPグループ会長)の連載が載っている。

CP(チャロン・ポカパン)グループはタイ最大の食品を軸にしたコングロマリッドである。

CPグループとは汕頭出身の潮州系タイ人、謝家(チエンワノン家)が基礎を作ったコングロマリット(複合企業)である。タイで最大のコングロマリットと言われ、農業分野や食料品の分野を中核事業として、通信、不動産分野にも精力的に進出し、全部で8つの分野で事業を展開している。国際的には、ASEAN各国や中国などを中心に世界13カ国に進出し、ロンドン証券取引所上場企業となっている。

特に、中国へは積極的に進出しており正大集団(チアタイ集団)として知られ、中国最大の外資系企業である。タイの企業は中国への進出に消極的と一般に言われているが、その中で積極的に中国本土へ投資しており、珍しい存在だとされている。

(Wikipedia より)

私はいつものように、タニン・チャラワノン(CPグループ会長)の「私の履歴書」の中から、文化大革命後の中国進出について記載した次の言葉を手帳に書き留めた。

「米国や日本のように経済が発展した国に行っても入り込む余地は少ない。文革終了後の中国には何もなかった。我々がこれから開発できるのだ。私はすぐに投資を決断した。」(2016年7月17日付)

「まもなく、深圳(シンセン)への投資認可が下りたが、そこには『0001号』と記載されていた。」(2016年7月18日付)

大きな会社も、まずは一人の挑戦から始まり、そして事業は代々続き、その挑戦が繰り返される。チャンスが来るまで、チャンスが来るか来ないかに関わらず、日々努力する。そして、チャンスが来たら、果敢にチャンスに挑む。紙面からタニン・チャラワノン(CPグループ会長)の得意満面の笑顔を想像したのは私だけだろうか。

この週末も元気をもらった。3連休も終わり、明日からまた足元の仕事に精一杯打ち込んで、元気に頑張る。「運命の女神に後ろ髪は無い」らしい。通り過ぎた後で、気付いて捕まえに行っても、後ろ髪は無いので捕まえる事が出来ない。いつか再び、もっと面白いチャンスが到来したときに、運命の女神の前髪を捕まえる事が出来れば、それこそ、痛快ではないか!